はじめに
ご存じのとおり、ポケモンはいろいろな方法を以て分類される。図鑑、地方、タマゴグループなど。その中でも最もメジャーな分類方法がタイプによるものである。
それでは皆に問うてみたい。
ポケモンをタイプによって何種類に分類することができるだろうか?
簡単な質問である。18種類だろう。
ノーマル・かくとう・どく・じめん・ひこう・むし・いわ・ゴースト・はがね・ほのお・みず・でんき・くさ・こおり・エスパー・ドラゴン・あく・フェアリー
果たしてそうだろうか?私は二種と答える。
この論文ではポケモンのタイプの種類を新しい観点からみて、より簡潔にタイプの相性を考えていくとともにそれをポケモンバトルにおいていかに応用していくのかということを目標に考察を進めていく。
元素(element)
過去に、この世界の物質は四元素(火・空気・水・土)によって構成されているという概念が一般であった。当然今日においてそうではないことは明らかである。しかしこの考え方はほのお・ひこう・みず・じめんといったように実際にポケモンの世界に反映されているように思える。
ここで元素に基づいたタイプがいくつあるのだろうかと書き上げたところ
どく・じめん・いわ・はがね・ほのお・みず・でんき・くさ・こおり
のようになった。多少の解釈の違いはあるかと思うが諸君らの直感と大きくずれることはないと思う。
これを元素タイプとする。ここで元素タイプ同士はお互いに干渉性が高いことに注意されたい。
人格(individuality)
次に先ほどの元素に対して独立であるタイプについて考える。
ゴースト・あく・エスパー・かくとう・ノーマルあたりが挙げられる。これらのタイプをまとめて人格タイプと呼ぶことにする。人格タイプ同士もまたお互いに干渉性が高い。
また元素9種類、人格5種類であることから元素には全体に対する干渉性の性質が強く、人格には全体に対する一貫性の性質が強いと定義する
また干渉性とはタイプ相性の倍率の発生の起こりやすさと考え、一貫性とは技の等倍での通りやすさを指すとする
まとめると
・例外はあるものの元素・人格それぞれ同じタイプ同士で干渉する。
・元素と人格は基本的に独立である。
・元素には干渉性の性質があり、人格には一貫性の性質がある。
生命の構成要素
これまででタイプを元素と人格に分類してきたが、ひこう・フェアリー・むし・ドラゴンは何にも分類されていない。果たして分類する必要があるだろうか?
これらのタイプの共通点を見ていきたい。すべてが生命ではないか。
生命とは何を指すか?肉体があり、そこに魂が宿ると生命が誕生する。
いいかえると
生命=元素+人格 が成立する。
ネタバレには十分配慮するが、劇場版ポケットモンスター『ボルケニオンと機巧のマギアナ』の内容を要約するとそんな感じである。
つまり生命は元素と人格によって構成されるため、生命というタイプをわざわざ考える必要はないのである。また、生命は元素・人格それぞれに一定の干渉性を持っていることも分かる。
ここで下の図のように生命タイプでは元素に比較的強く干渉するものから人格に比較的強く干渉するものまで、まちまちであるが、これは生命の組成が元素・人格の二つの独立要素においてグラデーション的に変化しているからだと考えてもらって構わない。
表記(表現)方法
ここまでで元素タイプ・人格タイプの定義について解説してきた。 ここから元素人格論の論文を読むにあたって注意しなければならない表記・表現についていくつか説明しておこう
(ⅰ)単タイプ且つ「生命」を含まないポケモンはそのまま「元素」「人格」と表記する
(ⅱ)「生命」を含むポケモンは無条件で「元素人格」となる
(ⅲ)複合タイプのポケモンは「元素人格」「元素元素」「人格人格」などど表記するが、いかなる理由があろうと「元素」「人格」の順番に記入する。
これは元素が9タイプ、人格が5タイプ存在し、干渉の優先順位に違いがあることに由来する。
(ⅳ)「元素元素」状態のことを特に互いに素であると表現し、「人格人格」状態のことを特に互いに格であるという。
例
(1)ピカチュウ→元素
(2)ローブシン→人格
(3)クレッフィ→元素人格
(4)ナットレイ→互いに素(△元素元素)
(5)ヒスイゾロアーク→互いに格(△人格人格)
元素人格論の起源
そもそもなぜ私は元素人格論の考えに至るようになったのだろうか?
それは私のポケモンバトルにおける考え方として
「単純なタイプ相性の押し付けという行為にほとんど関心がない」というのが根底にあるからである。
半減で攻撃を受けること、2倍の攻撃をすることのメリットは重々承知しているが、それは相手にとっても同じではないのか?ここに重点を置いた結末は人間同士のエゴの押し付け合いに収束し、ポケモンの本来のポテンシャルを最大限発揮する機会が失われてしまうのではないかと危惧したからに他ならない。
3体しか選出できないポケモンバトルで、例えば元素の一貫切りに躍起になって元素3体を選出するような窮屈な戦い方をしてしまう。こんなことは避けたい。
このような経緯でタイプを二元的にとらえ、なるべく抽象的に視野を広くポケモンバトルを考えようという元素人格論は編み出された。
元素人格論によるテラスタル考察
まずはテラスタルの対戦における特徴を見てみよう。
①テラスタルでタイプが変わる
➁技の威力が上昇する
①のタイプ変更による影響は耐性の変化と、タイプによる威力上昇補正であり、➁を内包しているとみて構わないので
①´耐性の変化
➁技威力の上昇
以上の二つから考察を進めていく。
また➁においては
・テラスタイプと使用するわざのタイプが同じ場合1.5倍
・元のタイプ・テラスタイプ・使用するわざのタイプがすべて同じ場合2倍になるという特徴がある。
テラスタルによるタイプ変化を考えるうえで、①´➁の観点より合計22パターンを考えればよいというのはお分かりいただけるだろうか?
下の表を見てもらうと、2倍の威力になる可能性があるものは2パターン考慮する必要があるため2、可能性がないものは1.5倍になることしかできないため1と表記した。表の数字をすべて足すと22となる。
これらをすべて考察していきたいが、量が膨大になってしまうためなるべく簡潔に行いたいと思う。
元素人格→元素人格(2倍)
このテラスタルを見て諸君らは何を思うだろうか?8世代でいやというほど目にしてきた光景である。そうダイジェットだ。
元素人格→元素人格(2倍)は、生命→生命の変化に限られるため、このように特徴づけて問題なかろう。変化後の元素人格の特徴は、生命特有の元素にも人格にも一定の干渉性と一貫性を持っていることであり、威力上昇の幅も大きいことから、このなかで最もバランスの取れたテラスタルといっても問題ないだろう。
元素人格→元素人格(1.5倍)
このテラスタルの特徴は複合タイプの元素人格から単タイプの元素人格に変化していることである。複合タイプの元素人格の特徴として、元素・人格のそれぞれの特徴を最大限発揮しやすいというものがあるが、生命への変化により、それがコンパクトにまとまってしまっているように感じる。強みを見つけにくいバランス型のテラスタルであるように感じた。逆に言うと種族値や特性があまりにも優秀だが、弱点の多さが足を引っ張っている場合は一考してもよいと感じる。
元素→元素人格
元素ポケモンがランクマッチ環境で活躍する条件としては
・干渉性の高さを攻撃面もしくは防御面で生かせていること
・特性、天候によるバフにより強引に人格的性質も兼ね備えている
などが挙げられる。
逆に活躍しづらくなっている要因としては
・元素ポケモンに不足しがちな一貫性に関して乏しい
であるので、すでに活躍していたポケモンの元素人格テラスタルは長所を打ち消す形となるのであまり強くないと考えた。
逆に活躍しづらい要因に関しても、
元素→人格のほうが打開策として有効であると考えたので個人的には評価しづらいものだと考えた。
人格→元素人格
元素→元素人格の逆の現象、つまりは長所の打ち消し、もしくは干渉性に着目する場合でも人格→元素で賄えるということが起こりえると考えたので評価しづらいと考えた
互いに素→元素人格
互いに素なポケモンの長所として
・元素同士の干渉性がうまくかみ合っており、耐性的に特定のポケモンにとても強く出られる
・攻撃面での強い干渉性の押し付けがしやすい
が挙げられる。
また短所は長所の逆ともいえるのだが、
・干渉の打ち消しが起こり、結局元素的特徴を生かしきれない
ということが挙げられる。
良くも悪くも互いに素なポケモンは組み合わせが命であり、元素的性質による依存が強いと分かる。
このことから互いに素なポケモンの元素人格テラスタルを活かすのは干渉の打ち消しがデメリットとして大きいポケモンに限られる。
それならば私は互いに素なポケモンの元素テラスタルでよいと考える。
互いに格→元素人格
ここで私は対戦面で互いに格のポケモンは攻撃面において非常に優秀な性質を持っていると考えている。
なぜなら一貫の性質はタイプの増加があったとしても打ち消しが起こらないからである。
しかし逆に防御面においては脆く儚いポケモンたちである。
このことから互いに格→元素人格には
・攻撃面では2倍の補正をとるよりも一貫の増加を見る場合は人格テラスタルでよい
・耐久には優れているが互いに格なことがデメリットな場合は互いに格→元素でよい
という性質があった。互いに格なポケモンの攻撃性能が高さから一定のスペックは発揮できるだろうが、最高のテラスタルかといわれるとそうでないように思える。
元素人格→元素(2倍)
このテラスタルの特徴は複合タイプの内一つの人格タイプをなくし、もう一方を強化するというところにあると思う。
人格の一貫をなくしてまで、干渉の威力強化を取るという面では攻撃面に関して特性や特徴的な技などが元素に対して有効に働いており、威力上昇をもって人格的性質を兼ね備えているのだろう。そのような場合には有効なテラスタルであると感じた。
防御面では人格を消すことに相手の人格の否定以外の意味はないが、それが目的なら十分意味のあるものだと感じた。
元素人格→元素(1.5倍)
単タイプの元素テラスタルか複合タイプの元素テラスタルかによって意味は異なってくるが、いずれにせよこのテラスタルは受け方面での意表をついた役割破壊という点で非常に興味深い。逆の干渉性を持った変化によって相手へのアドバンテージを得たい場合はこのテラスタルは有効であろう。元素→元素(1.5倍)と違って相手の人格による攻めまで網羅できるところが面白い。
元素→元素(2倍)
元素人格→元素(2倍)の攻撃面の時と同じで、特性や特徴的な技などが元素に対して有効に働いており、威力上昇をもって人格的性質を兼ね備えている場合に有効に働く。防御面にメリットが全くないがそれでも有効なテラスタルであることに変わりはない
元素→元素(1.5倍)
元素人格→元素(1.5倍)の防御面の時と同じで意表をついた役割破壊という点で非常に興味深い。逆の干渉性を持った変化によって相手へのアドバンテージを得たい場合はこのテラスタルは有効であろう。
また干渉性を活かした2方面での詰め幅にも注目である。火力上昇に恵まれないため、もともとの攻撃力が高いポケモンに向いているようにも見えるが、干渉性を活かすのであればそうでなくてもよいかもしれない。
人格→元素
完全に反対の性質へと変化するこのテラスタルは少し難しいように感じる。テラスタルのしてもしなくてもいいというメリットがかなり薄いからだ。
但し防御面での優れた性質を持ったポケモンが人格によって活躍しきれていなかった場合、有効に働くこともあるだろう。
また人格が必ずしも攻撃面で優れているとは限らない、干渉性の無さから上振れた攻撃をすることに適していない。火力が中途半端なポケモンはこのテラスタルを有効に働かすことができるだろう。
互いに素→元素(2倍)
元素人格→元素(2倍)の攻撃面の時と同じで、特性や特徴的な技などが元素に対して有効に働いており、威力上昇をもって人格的性質を兼ね備えている場合に有効に働く。また先ほど互いに素→元素人格の所でも述べたが、防御面での互いに素な場合の干渉の打ち消しが邪魔をしている場合にこのテラスタルは有効に働くだろう。
さらに干渉性による攻撃の詰め幅が火力上昇によって起こりうることも十分注意されたい。
互いに素→元素(1.5倍)
このテラスタルはスペックの伸び幅という点では攻撃面、防御面ともにかなり優れているだろう。
まず攻撃面では干渉性の強いタイプを3つ用意することによる詰めの範囲は相当なものであると考えられる。元素→元素(1.5倍)よりも強力なテラスタルといえる。
また防御面での役割破壊も元素→元素の時よりも大きいと言えそうである。互いに素なポケモンの4倍弱点を持ちやすいデメリットを消しているからに他ならない。
互いに格→元素
先ずは攻撃力の高い互いに格なポケモンが元素テラスタルをすることの有効性である。元素に対する干渉性の持ちにくさという本来の互いに格のポケモンの弱点を消している。
また防御面では互いに格であることがデメリットであったポケモンの救済に対して一番有効に働いているといえる。
今のところトップクラスの性能を持ったテラスタルなのではないだろうか。
元素人格→人格(2倍)
このテラスタルの特徴は元素を消すことを犠牲に人格を強化しているところにある。つまり防御面に関しては元素がデメリットになっている場合にのみ有効に働く。
また攻撃面に関しては無難に一貫性を強化するため優れたテラスタルだと考えた。
元素人格→人格(1.5倍)
人格に変化することの防御面に対するメリットは弱点を減らすことにあるため、驚異的な耐久を持ったポケモンはこのテラスタルを活かすことができるだろう。
攻撃面では複合タイプの場合一貫性のベクトルが増えるが倍率には恵まれないためもともとの火力が優れている場合にのみ有効なテラスタルになると考えた。
単タイプ元素人格が人格に変化するのはかなり小さくまとまってしまっている感じがあり、私はあまり評価できなかった。
元素→人格
防御面では元素人格→人格(1.5倍)と同じで弱点を減らすことにあるため、驚異的な耐久を持ったポケモンはこのテラスタルを活かすことができるだろう。しかし元素人格→人格より人格の干渉性を無視できる分コンスタントな伸びしろであり、人格元素→人格テラスタルを最大限に生かした場合よりは上振れは少なそうだ。
攻撃面では元素人格→人格(1.5倍)と比較して単タイプ元素人格と複合タイプ元素人格の中間くらいの性質を持っていると考えた。
人格→人格(2倍)
タイプ変更によるメリットは一切ないが、人格の一貫性と2倍の上昇幅の相性が良く、攻撃面において有効なテラスタルであると考えた。
人格→人格(1.5倍)
元素人格論に真っ向から否定してくるテラスタルだといえる。人格は一貫性があるのに人格変更になんの意味があるのだろう。これは己の人格の否定に他ならない。最も弱いテラスタルと考えてよいだろう。
互いに素→人格
防御面では互いに素→元素との比較がなされるだろう。互いに素→元素は防御面での役割破壊的性質が強いが、こちらは干渉のされにくさから安定感に優れていると思ってよさそうだ。
攻撃面では優れた範囲をもつが弱点の多い耐久が高めのポケモンにおいて有効なテラスタルだと感じた。さらに互いに素→元素の範囲と攻撃範囲でもほとんど変わりはないので相当優秀なテラスタルなのだろう。
互いに格→人格(2倍)
人格特有の無効化ができなくなる可能性に目を瞑れば、もはやデメリットの無いテラスタルだろう。
人格の火力上昇2倍にさらにもう一つの人格が存在するとなれば、もはや半減以下の打点を持つことはほとんど起こらないだろう。人格の特徴を最も活かしたテラスタルだ。防御面ではあまり有効に働かず、互いに格なポケモンは元来攻撃的なポケモンと相性がよさそうだ。
互いに格→人格(1.5倍)
人格5種類の内3種類をしようしたテラスタルである。互いに格→人格(2倍)同様に一貫性には申し分ない性質を持っているが、一貫の種類をここまで集めることを過剰だと思わないわけではない。
まとめ
ここまでの長文をすべて読んだ諸君は立派な元素人格論者だ。
以上22パターンの考察をしたが、元素→人格と人格→元素で全く異なる性質を持っていたり、逆が必ずしも想定と一致しなかったりと興味深いことにたくさん気付けて良かった。
これですべてを網羅できたわけではないと思っており、欠陥もたくさんあると思っている。言いたいのは自分で考えて思ったことを言語化した結果、ポケモンそれぞれの特徴を活かすことができるということだ。
元素人格論は私一人で構築した論であり、ポケモンバトルの長い歴史で積み上げられた考えに遠く及ばないことは理解している。ただ確かにポケモンを分かりやすく捉える上では優れた論であると自負しており、これを諸君らに共有できたことをとても嬉しく思う。
様々な観点からポケモンを見ることに非常に大きな価値があると考えているので、元素人格論者になった諸君、そうでない諸君からも元素人格論に対する批評をお待ちしたい。
余談
ご存じの通りポケモンのタイプははじめ15タイプあり、続いてあく・はがね・フェアリーの順番に発見されたのだ。
ここで気付いてほしいのが、あくは人格、はがねは元素、フェアリーは生命なのである。しかもフェアリーはあくにもはがねにも干渉している。
つまり、フェアリータイプはあくタイプとはがねタイプが見つかったからこそ誕生したタイプなのであると。決してラティオスのこだわりメガネ『りゅうせいぐん』が強すぎたからではない。そのような考えを持つ人がいることを残念に思う。
化学において定期的に新元素が発見されるように、元素人格論に基づいてこれからも新しいタイプが発見されていくのだろう。
諸君の周りにはこのような友人はいないだろうか?
「ポケモンはフェアリータイプが出てからついていけなくなったんだよね~」という友達だ。
そんな友達を見つけたらこう答えてあげて欲しい
「今のタイプは2つしかないんだよ?ねっ簡単でしょ?」
とそして元素人格論(¥3400)を勧めてあげるのもよいだろう。